プロローグ

prolog

 

定期的に訪れる痛みに息を荒げながら、うっすらと開けた目で窓の外、遠くの空を見る。

いつの間にか、もう明け方が近いのね
目に入るのは、うっすらと浮かび上がる山の輪郭と少し白みを帯びた綺麗な青。
時折、強い風がガタガタと窓を震わせている。
そして馬の嘶く声と回る車輪の音、ざわめく人の声がしていた。

もう少しですよ
遠くに行きそうな意識を掴んでは引き寄せながら、体を強くいきませる。

……オギャア

小さな声がした。少し小さいけれど、しっかりとした声。
その小さな声の主を取り上げ、その場を動こうとした女官が、傍らの老婆に「まて」と止められる。

もう一人いるよ
そうつぶやくしわがれた声が耳に届いた。痛みに霞む目を凝らす。
老婆に抱かれた小さな手が見えた。

泣きなさい
泣きなさい
お願いだから

泣いてちょうだい

ガタッと一際大きな音をたてて、見えない力に開け放たれた窓から突風が舞い込んでくる。
風は室内を駆け巡り、鼻先に夏の香りを残していった。

…ギャア

か細く静かに、声が聞こえる。途端に全身の力が抜けていった。

風があなた達が祝福している
ふとそんなことを思いながら、安心して遠のいていく意識の向こうで、老婆の震える声がはっきりと聞こえた。

忌み子じゃ
久方ぶりの王族直系の男子の誕生じゃというのに…まさか双子とは
なんということ…