エピローグ

epilogue

 

その後のことを少しだけ──。

デュクレオンがクリスタロスを出た後、彼は北の大地へと向かった。
白髪の男に会うためだ。

数年後に、使徒の国ルーメンゲイツから、デュクレオン入国の知らせが来るまでの間、
彼がどこで何をしていたかという事は誰も知らない。

一方、カルシオンはその才覚を持って、20代半ばで後継者として王の傍らで政治に携わることになる。

その間、過去の出来事から、王自ら動かせる独立した戦力の整備にとりかかり、
父王の退位後、自らが王位についてすぐに、王の騎士団銀十字《シルバークロイツ》を創設した。

カルシオンはその力でより王政をただすため規律を改め、法を施し、
また、国民に対して王室を開き、風通しの良い政治を行った最初の王となる。
彼の功績はそれだけに留まることはなく、後に歴代稀に見る賢王としてその名を大陸に響かせる事となる。

この時期、銀十字《シルバークロイツ》に不思議な男が現れる。

その男は自ら「流れ者の剣士」と名乗り、カルシオンの前に突然現れ彼に剣を捧げた。
カルシオンはその男の到来を、まるで待ちわびていたかのように、男を銀十字の騎士団長として迎え入れる。

謎が多く、つかみどころのない彼のことをまるで風のようだと比喩するものも多く、
またその実力から剣聖の名を冠し、字を《風の守護者》と呼ばれる。

カルシオンの側で力を振るった後、彼は後継を見だしいつの間にか静かに消えていた。
それこそ、まるで風のように──。
そのことも最初から分かっていたかのように、カルシオンはそれ以上彼の行方を追求することもなかった。

 

カルシオン、享年76歳。
最愛の妻ナターシャとその子ども達に看取られながら、静かにその生涯に幕を下ろした。

デュクレオンのその後は誰も知ることはない。
ただ、今もどこかで…またはかの国で、メトシェラとして生きているのだろう。

カルシオンの魂(おもい)とともに──。